暗号資産って、同じビットコインを買っていても――
「どの国のルールで取引しているか」で、体感がまるで変わるんですよね。
アメリカは、政治が一気に空気を変える国。
日本は、過去の事件や利用者保護の反省から、“守りを固めながら”制度を積み上げてきた国です。
今回は、日本とアメリカの「税金」「規制」「市場インパクト」を比較しつつ、
日本がアメリカから影響を受けそうな点(=次に動きそうな論点)も、あくまで推測として整理します。
※特定の売買を勧める記事ではなく、「制度と相場の空気の関係」を理解するための内容です。
日本:分離課税(20%前後)に前進(ただし条件付きの提案)
米国:税率より「報告(1099-DA)」で“見える化”
日本:資金決済法中心→金商法へ寄せる議論が進行
米国:SEC/CFTC分断→CLARITYで整理したい
日本:利用者保護・国内で守る設計が強め
米国:政治イベントで「期待→失望→再評価」の揺れが大きい
まず前提:日本は「先に整備」、アメリカは「いま整理したい」

日本は、暗号資産交換業者の登録制や顧客資産の分別管理など、早い段階から枠組みを積みました。
その土台は今も資金決済法(決済・移転の観点)が中心です。
一方アメリカは、巨大市場なのに監督の線引きがややこしい。
SEC(証券)とCFTC(商品先物)の境界が曖昧なまま、取り締まり(執行)で進んできた面があり、
それを“法案で整理したい”という圧力が強いんですよね。
ここがポイント
日本=「まず守る枠」→徐々に金融商品っぽく寄せる
米国=「市場が先に巨大化」→あとから監督を一本化したい
同じ「規制」でも出発点が違うので、市場への効き方も違って見えるんです。
比較①:規制の違い(取引所・監督・ルールの作り方)
日本:2025年改正資金決済法で「仲介業」を新設、“守り”も強化
日本は改正資金決済法(令和7年法律第66号)で、暗号資産・ステーブルコイン周りの実務をアップデートしました。
具体的には、2025年6月6日に成立、6月13日に公布され、施行は「公布日から1年を超えない範囲で政令で定める日」とされています。
現場に効くポイントは、ざっくり2つです。
- 電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の創設(=「媒介だけ」を別枠で規律)
- 利用者保護の厚み(事業者の体制・資産管理をより厳格にしやすい設計)
たとえ話
「紹介するだけの人(仲介)」が、いきなり「銀行(取引所)」と同じ免許・体制を求められると参入しにくいですよね。
仲介業の新設は、“役割に応じてルールを分ける”整理です。結果として、利用者保護を保ちつつ、新しいサービス形態も出しやすくなります。
日本:さらに「金商法へ寄せる」議論が具体化(インサイダー規制など)
2025年12月に公表された金融庁のワーキング・グループ報告では、
いま資金決済法の枠にある暗号資産を、投資商品として金商法(金融商品取引法)側へ寄せる提言が示されています。
初心者向けに言い換えると、こうです。
- 「決済の道具」だけじゃなく、「投資商品としての顔」も正面から扱う方向
- 不公正取引(インサイダー的な論点など)を、より“金融商品っぽく”整備する可能性
私の考察
日本は「自由にやってね」より、まず「事故らない仕組み」を作る国です。
だから金商法寄りになると、短期的には“窮屈”に感じる人もいる。
でも長期では、制度の説明がつく=大きいお金が入りやすい面も出ます。ここ、相場の空気に効いてくるんですよね。
アメリカ:GENIUSは成立、CLARITYは下院可決→上院へ、Anti-CBDCは下院可決段階
アメリカ側は、いま注目の3本が性格バラバラです。
- GENIUS Act:ステーブルコインの連邦ルール(2025年7月18日に成立)
- CLARITY Act:市場構造(SEC/CFTCの線引き)を整理したい(下院可決、上院委員会付託)
- Anti-CBDC Surveillance State Act:CBDC(デジタルドル)を巡る政治争点(下院可決段階)
ここで大事なのは、米国では「成立」より前に、ニュースの段階で相場の空気が揺れやすいこと。
そして「途中で止まる/揉める/修正される」ことも普通に起きます。
投資家の見方(超実務)
米国の法案ニュースは、成立より前に“期待”で動き、途中で“失望”も織り込みがちです。
つまり、ニュースを読んだときに見るべきは「内容」だけじゃなく、「進捗(どの段階?)」。
これは売買の推奨ではなく、政治材料が相場の空気を作る“仕組み”として覚えておくと楽になります。
比較②:税金の違い(日本=税率が主役、米国=報告が主役)
日本:分離課税(約20%)へ前進、でも「法整備が前提」の提案
日本の暗号資産税制は長らく「雑所得・総合課税(最大55%前後)」が重いと言われてきました。
2025年12月19日に公表された令和8年度税制改正大綱では、一定の暗号資産取引について申告分離課税(約20%)を導入する方針が示され、
損失の繰越控除(3年)も方向性として整理されています。
ただしここ、すごく重要で――
これは「明日から全員が20%」ではなく、金商法等の法整備を前提にした設計です。
つまり、日本は税だけ先に動くというより、投資家保護や健全な市場の枠とセットで進む可能性が高い。
ここがポイント
「税が軽くなる方向」ほど、同時にルールも金融寄りに整うのが日本っぽい進み方です。
だから“税だけの話”として読むと、逆に分かりにくくなります。
米国:税率より「1099-DA」で取引を“見える化”する力が強い
米国の暗号資産税務で現場に効きやすいのは、税率の上下というより、
報告(情報申告)で“捕捉する仕組み”です。
代表が、Form 1099-DA(デジタル資産の取引報告)。
IRSは、フォームによる報告が2025年1月1日以後の取引から始まることを案内しています。
さらに、少なくとも「2025年の報告では取得価額(basis)の報告は必須ではない」という移行的な扱いも示されています。
加えて、DeFiまで広くブローカー扱いにする拡大案は、政治(議会手続き)で覆された経緯も報じられました。
つまり米国は、「税務で締める力」は強い一方で、技術的に無理がある線は政治で引き直されることもある。
この揺れが、市場の空気に効きます。
私の考察
日本は「税率」を議論の中心にしやすい国。
米国は「報告=見える化」で市場を金融っぽくしていく国。
どっちが良い悪いではなく、“効き方の違い”として見ておくと読み間違えにくいです。
比較③:市場インパクトの違い(同じニュースでも、効き方が違う)
日本:利用者保護が強いぶん「安心」は作れるが、スピードは抑えめになりやすい
日本の制度は、破綻や流出のリスクを織り込んで、利用者保護を厚くする方向が強いです。
これは良い面としては、“安心して使える土台”になる。
一方で、事業者側の体制整備コストは増えやすく、
新サービスの立ち上がりスピードは、米国のような“ドカンと拡大”にはなりにくいことがあります。
米国:政治が空気を変えやすく、資金流入も流出も極端になりやすい
米国の特徴は、政治が空気を作り、空気が資金を動かしやすいこと。
法案が進むだけで「機関投資家が入りやすくなるかも」という物語が広がり、期待で買われる。
でも止まると、失望で売られる。
この振れ幅が大きいのが米国です。
ここから本題:日本はアメリカから何に影響を受けそう?(推測)
ここからは「断言」ではなく、制度の流れから見た“起きやすい影響”として書きます。
影響①:ステーブルコインは“国際送金”が焦点になり、日本でも導入議論が進みやすい
米国でステーブルの連邦ルールが整うと、世界的に「決済インフラとして使う」議論が加速します。
すると日本でも、事業者や金融機関が「導入を社内で説明しやすくなる」方向に働きます。
ここがポイント
ステーブルコインの普及は、投機よりも「送金・決済」で効きやすい。
米国がルールを作るほど、日本の現場も「使う前提の議論」をしやすくなります。
影響②:市場構造(監督の線引き)で、日本は「金商法寄り」を加速しやすい
米国で市場構造(CLARITY)の議論が進むと、グローバル事業者は「米国基準」で設計したくなります。
その結果、日本も国際競争力の観点で、暗号資産を金融商品として整理する議論を進めやすい。
実際、日本でも暗号資産の規制を金商法へ寄せる検討が進んでいるため、米国の動きが背中を押す形になり得ます。
影響③:税制は「米国に資金が流れる」圧力が、日本の改正を後押ししうる
投資家は正直です。
税やルールの差が大きいと、資金も人も“動ける方へ”動きます。
日本で分離課税が進む背景には、国内の普及だけでなく、国際競争(人材・企業・資本)もあるはずです。
米国が制度面で整えてくるほど、日本も「税制を整えないと勝てない」という空気になりやすい――これは自然な力学です。
影響④:税務の“報告”は、結局グローバル標準に寄っていく
米国の1099-DAのように「取引の見える化」が進むと、世界の取引所・カストディは対応を迫られます。
日本が直接「米国税制」に従うわけではなくても、監査・金融機関連携・海外展開を考えると、
記録・証跡・レポーティングの標準化は避けにくい。ここは現場に効く部分です。
影響⑤:CBDC(中央銀行デジタル通貨)を巡る政治論争は、日本にも波及しうる
Anti-CBDC法案が象徴するのは、「便利さ」だけでは語れないテーマ――
監視への懸念、自由、国家と個人の距離感です。
この論点は、国が違っても燃えやすい。
日本でもCBDC議論が進む局面では、米国の議論(賛否)が“輸入”され、論点が似てくる可能性はあります。
(ただし、日本の制度・文化・金融構造は違うので、同じ結論になるとは限りません。)
FAQ:初心者がつまずきやすいところ
Q. 日本が税制を変えたら、すぐに全員が20%になりますか?
A. すぐに一律、とは限りません。
税制改正大綱は方針を示すもので、具体的な対象・条件・開始時期は、法整備(とくに金商法側の整理)とセットで詰められます。
だから「いつから」「どこまで」は、今後の制度設計(法案・政省令・運用)を待つ必要があります。
Q. 米国は税金が高い/安い、どっち?
A. 米国は連邦税に加えて州税なども絡み、単純比較が難しいです。
ただ“市場に効く”のは、税率よりも報告(1099-DA)のような見える化が進む点で、ここが日本と違います。
Q. 日本は米国の真似をするんですか?
A. “真似”というより、国際市場で戦う以上、どこかで整合が必要になります。
ただし日本は利用者保護を重視する文化が強いので、同じスピード・同じ設計にはなりにくいです。
まとめ:日米は「同じ暗号資産」でも、別ゲームに見える
- 日本:利用者保護を厚くしつつ、金商法寄りへ“金融化”を進める(税制見直しも連動しやすい)
- 米国:政治が空気を作り、期待と失望の振れが大きい(ステーブルは連邦ルールが先行)
- 日本が受ける影響(推測):ステーブルの決済・送金、監督整理、税制競争、レポーティング標準化、CBDC論争
最後に問いかけです。
あなたが見ているのは「日本のニュース」だけですか?
それとも「米国の制度が世界の空気を変える」ところまで、見えていますか?
日米比較は、相場の値動きで疲れた頭を“整理”してくれる地図になります。
参考リンク(一次情報+公的・準公的ソース中心)
- 国立国会図書館 日本法令索引:資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和7年法律第66号/公布2025年6月13日)
- 金融庁:改正資金決済法(令和7年法律第66号)の施行期日についての説明(公布日から1年以内の範囲で政令日)
- 金融庁:金融審議会 暗号資産制度WG 報告書(2025年12月10日)
- 金融庁:暗号資産制度WG 資料(改正資金決済法:2025年6月成立・公布、施行は1年以内の範囲)
- 金融庁:令和8年度税制改正(暗号資産の分離課税等の方向性)
- 長島・大野・常松法律事務所:令和8年度税制改正大綱(暗号資産の分離課税)解説
- IRS:デジタル資産のブローカー報告(Form 1099-DA、2025年以後の取引から)
- IRS:Form 1099-DAの説明(2025年はbasis報告は必須でない旨など)
- Congress.gov:GENIUS Act(Public Law 119–27, 2025年7月18日)
- Congress.gov:CLARITY Act(H.R.3633)進捗(下院可決→上院付託)
- Congress.gov:Anti-CBDC Surveillance State Act(H.R.1919)進捗(下院可決段階)
- Federal Register:戦略的ビットコイン準備金(Executive Order 14233, 2025年3月)
- Reuters:日本が暗号資産を金融商品として位置付ける検討(2025年3月30日報道)
- Reuters:DeFiを含むブローカー報告拡大の扱いを巡る政治的動き(2025年4月11日報道)
【注意】本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資行動を推奨するものではありません。法令・政省令・税務運用は改訂され得ます。重要な判断は公的情報や専門家(税理士・弁護士等)をご確認ください。暗号資産は価格変動が大きく、元本割れのリスクがあります。


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