暗号資産のニュースって、見出しは派手なのに、読んだあと「で、結局なにが起きるの?」って置いてけぼりになりがちですよね。
でも、そこに共通点があります。
政治が動くと、相場は“価格”より先に“空気”が動くんです。
そして、空気が変わると「入ってくるお金の種類」が変わる。
個人の投機だけじゃなく、企業・銀行・決済・ETFみたいな“制度の上を歩くお金”が、入りやすくなる(もしくは、入りにくくもなる)。
この記事は、トランプ政権下で進んだ(または注目された)暗号資産関連の動きを材料に、
市場が期待する“追い風”と、見落とされがちな“落とし穴”を、噛み砕いて整理します。
※投資アドバイスではなく、過去の反応例や制度の仕組みを「理解」する記事として書きます。
発言/署名/人事/大統領令
→ 「米国はウェルカム?」という空気
市場構造/ステーブル/税務報告
→ 参加条件が“見える化”
期待→失望→再評価
→ “途中の空気”で何度も揺れる
1. トランプ時代に市場が期待する「追い風」は何だったの?

追い風①:「米国が暗号資産に前向き」だと“感じさせる”政策演出
まず大きいのは、「米国は暗号資産を敵扱いしない」というメッセージが出ることです。
市場は、法律の細かい条文より前に、こういう空気で動きやすいんですよね。
象徴的だったのが、戦略的ビットコイン準備金(Strategic Bitcoin Reserve)の大統領令です。
2025年3月6日に署名され、官報(Federal Register)には2025年3月11日に掲載されています。
内容としては、刑事・民事の没収などで政府が保有するBTC等を、整理して管理する枠を作る趣旨が明記されています。
ここがポイント
ここで市場が反応しやすいのは「政府が買うから上がる」ではなく、
“政府が雑に扱っていない=制度の棚に並べ始めた”という安心感です。
暗号資産が“金融”に寄っていくとき、こういう象徴が効きやすいんですよね。
たとえ話
これは「政府が相場を買い支える!」というより、
“国として保管庫(倉庫)を作り、管理ルールを決めた”に近いです。
例えるなら、「金(ゴールド)の保管庫=金庫室」を整備するのに似ています。
値段を上げる魔法ではなく、「扱いが雑じゃない」と示す行為なんですよね。
追い風②:「ステーブルコインを制度の中に入れる」=決済インフラの地盤を固める
次に市場が強く反応しやすいのが、ステーブルコイン(例:USDCのように“1ドルに連動”を目指す通貨)です。
ステーブルコインは、暗号資産の世界では「待機資金」「決済」「送金」の要。
ここが整うと、市場全体の“血液”が太くなるイメージが出るんです。
GENIUS Actは、2025年7月18日に成立しました。
市場の空気としては「連邦レベルで、ステーブルのルールができた」という事実が大きい。
施行(いつから効くか)は条文・規則整備の都合で段階があるものの、少なくとも「方向性が確定した」ことで、企業や金融が話を進めやすくなります。
私の考察
ステーブルコインって、派手な値上がりで注目されがちじゃないですか。
でも本当は、“相場の裏側のインフラ”なんですよね。
インフラは目立たないけど、整うほど大きい資金が入りやすい。ここがGENIUSの“効き方”だと思っています。
追い風③:「市場構造(CLARITY)」=暗号資産の“交通ルール”を作る期待
CLARITY Actは、市場構造(market structure)=暗号資産取引の交通ルールを作ろうとする法案です。
初心者向けに言い換えるなら、「どのトークンが、どの監督で、どう取引されるべきか」の地図を作る話。
ただし、2025年末時点では未成立で、上院の委員会付託段階です。
だからこそ、市場は「期待→失望→再期待」の波になりやすい。これは次章で“落とし穴”として触れます。
市場構造(交通ルール)
取引所・ブローカー・監督の整理
ステーブルコインの連邦ルール
決済インフラの地盤づくり
CBDC(中央銀行デジタル通貨)を巡る政治争点
「監視」vs「国家の決済」
2. でも相場は“追い風だけ”じゃない:トランプ×暗号資産の落とし穴
落とし穴①:政治が絡むほど「反発」も増え、話がねじれやすい
暗号資産に前向きな政治が出ると、確かに追い風になります。
でも同時に、反対側はこう言いやすくなるんです。
- 「規制が緩すぎると、投資家が危ない」
- 「業界に有利すぎて、公平性がない」
- 「金融不安の火種になりうる」
つまり、追い風が強いほど、逆風も強くなる。
これは暗号資産に限らず、政治テーマ化した政策の宿命です。
ここがポイント
「親クリプトの政治家がいる=ずっと追い風」とは限りません。
追い風が強いほど、反対派の“突っ込みどころ”も増える。
だから法案は、一直線ではなく“ジグザグ”で進むのが普通なんですよね。
落とし穴②:法案は“途中で止まる”が普通。市場はそのたび揺れる
2025年7月の「Crypto Week」では、暗号資産関連法案が注目されました。
一方で、手続き面の投票でつまずいた局面が報じられ、市場が敏感に反応した例もあります。
投資家の見方(超実務)
ここで大事なのは、「法案が良いか悪いか」より先に、
“進むと思われていたのに止まった”とき、相場が反射的に揺れやすいこと。
政治材料は、成立より前に“期待”で動き、途中で“失望”も織り込みます。
落とし穴③:ステーブルが「社会インフラ」に近づくほど、“救済”論が出やすくなる
ステーブルコインが広く使われると、もはや「投資家の遊び」じゃなく、支払い・送金・企業間決済に近づきます。
すると、万が一トラブルが起きたとき、被害が「投資家の損」に留まらず、生活や企業活動に波及しやすい。
そうなると危機のとき、世の中でこういう議論が出がちです。
- 「ここが崩れると、決済が止まる。何か支えないと…?」
- 「パニック(取り付け)を止める仕組みが必要では…?」
この“何か支えないと”が、いわゆる救済論(バックストップ)です。
重要なのは、救済が「良い/悪い」と断じる話ではなく、金融に近づくほど、社会コストが議論になりやすいという構造です。
そして救済論が出る世界では、副作用も生まれます。
「どうせ最悪は助けられるかも」という期待が一部に生まれると、リスクの取り方が雑になり、次の事故の種になることがあります。
これがモラルハザード(甘えの問題)です。
3. “トランプ時代の追い風”が現場をどう変える?(取引所・ステーブル・税制)
ここから後半は、現場の動きに寄せます。
「ニュースとしての法案」ではなく、サービスがどう変わり、ユーザー体験がどう変わるかの話です。
3-1. 取引所:市場構造(CLARITY)が進むと、何が起きやすい?
(1)“上場の理由”が説明されやすくなる(=ルールが揃う方向)
暗号資産取引所で混乱が起きやすいのが、「なぜこの銘柄が扱われるの?」問題です。
市場構造の議論が進むと、取引所側は次のような説明責任を強く求められやすくなります。
- 供給量・配分・ロックアップ(売れない期間)の透明性
- 運営の権限(誰が仕様を変えられるか)
- 価格形成が歪みやすい設計かどうか
- 不公正取引(インサイダー的行為、操作)の監視体制
これは「上がる/下がる」の話ではなく、市場の説明可能性の話です。
説明可能性が上がるほど、企業や機関投資家は社内稟議を通しやすくなります。
(2)マーケット監視が重くなるほど、「出来高の質」が問われる
規制が整う方向では、出来高(取引量)の“見た目の大きさ”より、不自然な取引がないかが焦点になりやすいです。
体感としては、荒っぽい銘柄のスプレッド(買値と売値の差)が広がりやすくなったり、取扱いが慎重になったりする方向に寄ります。
(3)事業者は統合しやすい(コンプラ投資に耐えられる会社が強い)
制度対応はコストです。法務・監査・システム・人材。全部お金がかかる。
だから現場では、統合(M&A)や撤退が起きやすい。
これは「規制が嫌だ」というより、「ちゃんと守れる会社が生き残る」構造なんですよね。
私の考察
取引所の世界って、相場が派手な時ほど“便利さ”が評価されます。
でも制度が整う局面では、便利さ以上に「事故らない仕組み」が価値になりやすい。
つまり、競争軸が「手数料」から「信頼」へ、ゆっくり移るんですよね。
3-2. ステーブルコイン:GENIUS成立で「使い分け」が進む
(1)“どのステーブルでも同じ”ではなくなる
連邦ルールが強まると、ステーブルコインは次の要素で評価が割れやすくなります。
- 準備資産(裏付け)の質(現金同等物が中心か)
- 開示(何を、どれくらいの頻度で出すか)
- 償還(1ドルに戻す)の手続きが明確か
- 凍結・差押えなど、法的命令への対応
結果として現場では、「決済に使われるステーブル」が絞られていきやすい。
これも価格の話というより、“採用されるかどうか”の話です。
(2)ウォレット・決済アプリ・加盟店が“導入説明”をしやすくなる
ルールがないと、企業は怖くて導入できません。
ルールがあると、法務・監査に説明が通りやすくなる。
これが「ステーブルはインフラ」という理由です。
たとえ話
会社が新しい支払い方法を導入するときって、
「便利そう」だけでは通りません。
“問題が起きた時に誰が責任を取るか”が説明できないと、社内で止まります。
だからルール整備は、普及のスイッチになりやすいんです。
3-3. 税制:米国は「税率」より先に「報告(見える化)」が進む
税金の話は怖く聞こえますが、ここも噛み砕きます。
米国では、暗号資産の売買について、ブローカー報告(Form 1099-DA)の仕組みが進んでいます。
これが意味するのは、「税率が上がる/下がる」より先に、取引が把握されやすくなるという変化です。
ここがポイント
税制のニュースで市場がザワつくのは、税率よりも“やり逃げしにくくなる”空気が出るとき。
これは善悪ではなく、金融市場が成熟するときに起きやすい“順番”なんですよね。
現場の体感としては、こういう“詰まり”が増えがちです。
- 複数取引所をまたぐと取得価格(コスト)の整合が難しい
- 取引所→ウォレット→取引所の移動が多いと履歴が繋がりにくい
- ステーブルを挟む売買で損益計算が複雑になりやすい
だから、税制の話は「恐怖」ではなく、市場が“ちゃんと金融っぽくなる”過程として見ると理解が進みます。
もちろん面倒は増えます。でも、面倒が増える領域ほど、プロダクト(税務レポート、会計連携)が育ちやすい。
これもまた、制度が市場を“金融”に近づける例です。
4. まとめ:トランプ時代の「追い風」は、強いほど“落とし穴”も深くなる
- 追い風:大統領令や成立法で「米国はウェルカム」という空気ができやすい
- 追い風:ステーブルが制度化されるほど、決済インフラが太りやすい
- 落とし穴:政治テーマ化ほど反発が強まり、法案は途中で止まりやすい(相場はその都度揺れる)
- 落とし穴:金融に近づくほど、危機時の“救済”論やモラルハザードが議論になりやすい
- 現場:取引所は説明責任・監視・統合が進み、税務は「見える化」が先に進む
最後に、問いかけです。
あなたが見ているのは「法案で上がる/下がる」だけですか?
それとも、「暗号資産が“金融”に近づくことで、何が変わるか」まで見えていますか?
この差が、ニュースの理解を一段ラクにしてくれるはずです。
参考リンク(一次情報中心)
- Federal Register:Strategic Bitcoin Reserve(Executive Order 14233)
- White House:戦略的ビットコイン準備金 Fact Sheet(2025/3/6)
- White House:GENIUS Act署名 Fact Sheet(2025/7/18)
- Congress.gov:GENIUS Act(S.1582 / Public Law)
- Congress.gov:CLARITY Act(H.R.3633)
- Congress.gov:Anti-CBDC Surveillance State Act(H.R.1919 テキスト)
- House Financial Services Committee:Crypto Week発表(2025/7/3)
- IRS:1099-DA(デジタル資産のブローカー報告)ガイダンス
【注意】本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資行動を推奨するものではありません。法案・規則・税務は改訂され得ます。重要な判断は公的情報や専門家(税理士・弁護士等)をご確認ください。暗号資産は価格変動が大きく、元本割れのリスクがあります。


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