ここまで、
- ①「個人(会社員)として暗号資産を持つときの税金」
- ②「個人事業主 vs 法人(合同会社・株式会社)での税金の違い」
と2本の記事を見てきました。
そろそろ、こんな気持ちが出てきていませんか?
- 結局、自分はどの立場で暗号資産を持つのがいいの?
- 個人と個人事業主と法人の違いが、頭の中でごちゃごちゃしてきた…
- 「20万円ルール」「事業所得」「期末評価」とか、用語が多すぎてつらい…
そこで3本目のこの記事では、
- 個人(会社員など)
- 個人事業主
- 法人(合同会社・株式会社)
という3つの「器(うつわ)」を、一度に整理して比較していきます。
難しい計算よりも、
- それぞれどんな特徴があるのか
- どこが決定的に違うのか
- 自分はどこを目指すのがちょうどいいのか
を、感覚としてつかめるように書いていきますね。
・「どの器がいちばんトクか?」ではなく、「今の自分にどの器がフィットするか」を考える記事です。
・3つをバラバラに覚えるのではなく、一枚のマップとして俯瞰できるようになるのがゴールです。
税制って、「答えがひとつ」の世界じゃないんですよね。
同じ数字でも、どの器を選ぶかで“しんどくなり方”が全然違う。今日は、その「しんどさの種類」を見分ける回だと思って読んでみてください。
第1章|3つの立場をまずはざっくり一言で言うと?

細かい話に入る前に、3つをあえて雑に一言でまとめてみます。
- 個人(会社員など):
「手続きはラクだけど、大きく勝つと税率がキツくなりやすい器」 - 個人事業主:
「手続きはちょっと増えるけど、自由度と柔らかさがある器」 - 法人(合同会社・株式会社):
「ルールと固定費が重くなる代わりに、利益が大きいほど税率面で有利になりやすい器」
この“雑な一言”を頭の片隅に置いたまま、具体的に見ていきましょう。
第2章|個人・個人事業主・法人の「税金ルール」の違い
2-1. 税率の考え方の違い
| 立場 | 暗号資産の利益の扱い | 税率イメージ |
|---|---|---|
| 個人(会社員など) | 原則:雑所得(総合課税) | 所得税5〜45%+住民税約10%(最大55%) |
| 個人事業主 | 雑所得または事業所得(条件次第) | 基本は個人と同じだが、事業所得なら控除・通算が使いやすい |
| 法人(合同会社・株式会社) | 法人税の対象(益金−損金) | 中小企業で実効税率30〜35%前後が目安 |
ざっくりいうと、
- 個人:利益が大きくなるほど“階段式”に税率アップ
- 法人:利益が増えても税率はほぼ一定(実効税率)
という違いがあります。
・「爆益が出る年がたまにある」なら、個人でもやっていける。
・「毎年しっかり利益が積み上がる」なら、法人の“一定税率”が効いてきます。
2-2. 「いつ課税されるか」の違い
もう一つ、地味だけどとても大事なポイントが「タイミング」です。
| 立場 | いつ課税される? | 特徴 |
|---|---|---|
| 個人・個人事業主 | 売却したとき/他の暗号資産に交換したとき/決済に使ったとき など | 「売るまで課税されない」=含み益には課税されない |
| 法人 | 売却・交換・決済に加え、期末時点の時価評価(条件により原価法選択可) | 「決算日にも評価される」=含み益が課税対象になる場合あり |
個人は「売るまで税金発生しない世界」ですが、法人は「決算日というチェックポイントで一度リセットされる世界」です。
相場が強いときほど、「売らないでホールドしたい」気持ち、ありますよね。
そのとき、個人は“含み益ノータックス”、法人は“含み益で納税の可能性”という真逆のストレス構造を持っています。
2-3. 経費・控除・損益通算の違い
つぎに、「どこまで経費にできるか」「損失をどう扱えるか」を見てみます。
| 立場 | 経費の扱い | 損益通算・繰越 |
|---|---|---|
| 個人(会社員など、雑所得のみ) | 暗号資産取引に直接必要な費用のみ | 損失の翌年以降繰越は原則なし。他の所得との通算も原則不可。 |
| 個人事業主(事業所得として扱える場合) | 事業に関連する費用(通信費・PC・セミナー代・一部家賃など)も経費にしやすい | 他の事業所得と損益通算可。赤字の繰越控除も条件付きで可。 |
| 法人 | 会社の事業に必要な支出は広く損金算入の対象 | 法人全体の損失は翌期以降に繰越可能(期間・条件あり) |
個人事業主と法人は、
- 「事業としてちゃんと数字を残しているか」
で、使えるカードが一気に増えるイメージです。
第3章|3つの器の「メリット・デメリット」を並べてみる
3-1. 個人(会社員など)で暗号資産を持つ場合
◆ メリット
- 手続きがシンプル(会社員なら年末調整+必要なら確定申告)
- 「給与以外の所得20万円以下なら申告不要(所得税)」という20万円ルールの恩恵がある(※住民税は別)
- 法人のような固定費(均等割・設立費用・社会保険会社負担など)がない
◆ デメリット
- 利益が大きくなると、所得税+住民税で最大55%ゾーンに入る可能性
- 原則として、損失の繰越や他所得との損益通算ができない
- 会社員の場合、「会社バレ」など住民税まわりの悩みが出やすい
3-2. 個人事業主として暗号資産を扱う場合
◆ メリット
- 暗号資産を「事業の一部」として位置づけられる
- 青色申告特別控除、事業経費、他の事業との損益通算などのカードが使える
- 開業届+帳簿整備で始められ、法人よりコストが低い
- 事業全体のお金の流れの中で、暗号資産のポジションを調整できる
◆ デメリット
- 法人に比べると、やはり税率の天井は高い(最大55%)
- 事業所得として扱うには、継続性・営利性・帳簿など「実態」が必要
- 帳簿付け・確定申告の手間は、個人(会社員のみ)より増える
3-3. 法人(合同会社・株式会社)で暗号資産を持つ場合
◆ メリット
- 利益が大きくなるほど、実効税率30〜35%前後の世界の恩恵を受けやすい
- 役員報酬・家族への給与などで、世帯全体の税負担を設計しやすい
- 事業の信頼性(対外的な信用)が上がる
- 損失の繰越など、法人税のルールを活かしやすい
◆ デメリット
- 設立費用・顧問税理士・均等割・社会保険など、固定費が一気に増える
- 暗号資産には期末評価課税のルールが絡み、「含み益で納税」リスクがある
- 法人で稼いだお金を自分に出すときは、給与や配当で個人税もかかる(二段階課税)
- 管理・書類・会計の難易度が上がり、「気軽さ」はかなり失われる
第4章|自分はどの器が合う? 見極めポイントをチェックリスト化
4-1. 「数字」から見極めるチェック
まずは、冷静な数字のチェックから。
- ✅ 暗号資産の年間利益が、だいたい100〜300万円未満で動いている
- ✅ 今後3年くらいのイメージも、同じレンジか少し上くらい
→ まずは個人事業主の器で整えていくのが現実的
- ✅ 暗号資産の年間利益が300〜500万円前後に乗ってきた
- ✅ それが「一発のラッキー」ではなく、複数年続きそうな気配がある
→ 個人事業主+税理士相談で、法人シミュレーションを始めるステージ
- ✅ 暗号資産の年間利益が500万〜1000万円以上の年が何度も出てきた
- ✅ これからもフルタイムでトレード・Web3ビジネスを続けていくつもり
→ 法人化を本格的に検討するステージ(固定費・期末評価・二段階課税も含めて判断)
4-2. 「性格・メンタル」から見極めるチェック
税金の話に見えて、実はメンタルとの相性もすごく大事です。
- ✅ 毎月の固定費が増えると、一気にメンタルが重くなる
- ✅ 手続きや書類は、できるだけシンプルにしておきたい
- ✅ 「数字」より「身軽さ」の方が自分のパフォーマンスに効く気がする
→ 個人 or 個人事業主寄りのほうが合っている可能性大
- ✅ 細かい管理やルールを覚えるのは、むしろ嫌いじゃない
- ✅ 固定費が増えても、その分ちゃんと稼ぎに行こうと思える
- ✅ 事業を「自分ひとり」ではなく、「小さなチーム」にしていきたい
→ 法人の器も視野に入れていく価値あり
「どっちがトクか」だけで決めると、あとでしんどくなるパターンをよく見ます。
私は、「数字」と「性格」の両方で◯がつく選択をおすすめしたいです。
第5章|3パターンの“物語”でイメージしてみよう
5-1. パターンA:会社員+副業で暗号資産(個人からスタート)
- 本業の年収:380万円
- 暗号資産:最初は年数十万円の利益からスタート
この場合、
- 最初のうちは個人のまま(会社員)+20万円ルール+住民税申告で十分
- 利益が大きくなってきたら、副業全体をまとめて個人事業主化を検討
ゴールイメージは、
- 「本業+副業(暗号資産含む)」の2本柱を、個人事業主という器で管理
- 法人化は、利益が安定してから考える
5-2. パターンB:フリーランス+暗号資産(個人事業主メイン)
- フリーランスとしての売上:年間500〜800万円
- 暗号資産の利益:年間100〜300万円
この場合、
- 個人事業主としての帳簿整備が最優先
- 暗号資産を事業所得として扱えるか、税理士と相談
- 事業全体での損益通算・経費計上をフル活用するステージ
法人化は、
- トータルの利益が毎年安定して800万〜1000万円に迫ってきた頃
- かつ、今後もその規模で継続するイメージが持てたタイミング
からでも遅くありません。
5-3. パターンC:専業トレーダー・Web3起業家(法人化も視野)
- メイン収入源:暗号資産トレード・NFT・Web3事業
- 年間の利益:300〜1000万円、今後も伸ばしていきたい
この場合は、
- 個人事業主としての「第一形態」からスタートしつつ
- 法人化のシミュレーションを早めに税理士と進めておくのが現実的
特に、
- 暗号資産以外にも、コンサル・メディア・開発などの収益源を増やしていきたい
なら、
- 「個人で抱えるより、法人の器でまとめた方が長期戦に強い」
という判断になることもあります。
第6章|まとめ──3つの器を一枚のマップで覚えよう
最後に、この記事の内容を一枚のマップとしてまとめます。
| 器 | 向いている人 | 主なメリット | 主なデメリット |
|---|---|---|---|
| 個人(会社員など) | ・副業レベルの暗号資産 ・利益は年100万〜300万円未満 |
・手続きがシンプル ・20万円ルールの恩恵 |
・高所得ゾーンで税率が重い ・損失繰越・通算がほぼ効かない |
| 個人事業主 | ・副業〜専業の間くらい ・事業として暗号資産を扱いたい |
・青色申告・経費・損益通算 ・法人より柔軟で身軽 |
・税率の天井は個人と同じ ・帳簿など事務は増える |
| 法人(合同会社・株式会社) | ・利益300〜500万超が続く ・事業を拡大したい人 |
・実効税率が安定しやすい ・設計次第で世帯課税を軽くできる |
・設立・維持コスト ・期末評価・二段階課税のストレス |
そして、いちばん大事なのは──
「今の自分は、どの器で戦うのがいちばん“ラクに強くなれるか”?」
という問いかけです。
税金は、あなたのトレードをジャッジする敵ではなく、
「どんな戦い方が合っているか」を教えてくれる鏡みたいな存在だと、私は思っています。
3本の記事を通して、
- 自分の立ち位置
- これから進むかもしれないルート
が、少しでもクリアになっていたら嬉しいです。
FAQ|個人・個人事業主・法人の違いについて、よくある質問
Q1. まず最初は、必ず個人から始めるべき?
A. いきなり個人事業主として開業したり、法人からスタートすることも制度上はできますが、ほとんどの人にとっては「個人(会社員)」→「個人事業主」→「法人」の順番が現実的です。
特に暗号資産は収益のブレが大きいので、最初から固定費の重い法人にすると、メンタル面の負担が大きくなりがちです。
Q2. 個人事業主と法人、どちらが税務調査されやすいですか?
A. 一般論として、法人の方が「事業規模が大きくなりやすい」「社会的影響が大きい」ため、税務署から注目される機会は増えます。
ただ、個人でも暗号資産の利益が大きくなれば調査対象になることがあります。いずれにしても、帳簿・取引履歴・根拠資料をきちんと残しておくことが一番の防御です。
Q3. 「個人事業主でも、事業所得にせず雑所得のまま」にしておくことはできますか?
A. 実態として事業レベル(継続性・営利性・規模)があるのに、あえて雑所得にするのはリスクがあります。
逆に、事業実態がないのに事業所得として申告するのもNGです。
「実態に合った区分にする」ことが大前提だと考えてください。
Q4. 合同会社と株式会社、暗号資産トレーダーにはどちらが向いていますか?
A. 税金だけで見れば、大きな差はそこまでありません。
・設立費用の安さ(合同会社)
・対外的な信用力(株式会社)
などを踏まえて、事業内容や将来のビジョンで選ぶケースが多いです。どちらにしても、暗号資産の期末評価・会計処理の難しさは共通なので、税理士選びの方が重要と言えます。
Q5. 「将来の分離課税(20%)導入」を待ってから動いた方がいい?
A. もし本当に導入されれば個人に有利な面もありますが、「いつ・どこまで・どの取引に」適用されるかはまだ未定です。
「変わるまで何もしない」より、今のルールの中で最善の準備(記録・帳簿・体制づくり)をしておく方が、結果的に選択肢を増やしてくれます。
情報ソース・参考リンク
※本記事は、以下のような一次情報・専門家解説をもとに、暗号資産投資家向けに再構成したものです。最新情報や個別ケースは、必ず公式情報・税理士など専門家にご確認ください。
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」
- 国税庁「法人が保有する暗号資産に係る期末時価評価の取扱いについて」
- 国税庁タックスアンサー「所得税の税率」「事業所得と雑所得の区分」「暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係」ほか
- 法人税・中小企業の実効税率に関する各種解説(税理士法人・会計ソフトベンダー等)
- 暗号資産業界団体・税制改正要望書(分離課税・損失繰越・期末評価見直しなど)
本記事は一般的な情報提供であり、特定の税務処理・投資行動を推奨するものではありません。実際の判断は、あなたの収入状況・家族構成・居住地・事業内容などを踏まえて、必ず税務署や暗号資産に詳しい税理士にご相談ください。


コメント