冬の夜、スマホの通知が光るたびに、胸がちょっとだけザワつくんですよね。
「税金どうなるの?」「日本も法案が動いた?」「アメリカは“3法案”って何?」——。
相場は数字で動く。でも、人の想いが市場をつくるんです。
そして“想い”が集まる場所には、だいたいルール(=制度)が後から追いかけてきます。
この記事では、暗号資産に詳しくない方でも迷子にならないように、「法案・制度改正・税金(税率)」が今どこまで来ていて、あなたの投資行動に何が関係するのかを、具体例つきで整理していきます。
この記事でわかること
- 「法案」と「報告書」と「税制大綱」の違い(ここ、混乱ポイントです)
- 日本:2025年6月成立の制度改正で何が変わる?
- 日本:暗号資産を“投資対象”として扱う方向性(金融審議会WG報告)
- 日本:税金(税率)は本当に分離課税へ?どんな取引が対象になりそう?
- 米国:話題の“3法案(Crypto Week)”って結局なに?
まず最初に:「法案」「制度改正」「税制大綱」…言葉が似すぎ問題

暗号資産まわりって、ニュースの見出しが難しく見える最大の理由がこれです。
- 報告書(例:金融審議会のWG報告):こういう制度が必要だよね、という“設計図”。まだ法律そのものではありません。
- 税制大綱(与党・政府):来年度、税金をこう変えたい、という“方針”。ここから法案化→国会→成立→施行…と進みます。
- 法案:国会に提出される“法律の原稿”。可決されると法律になります。
- 成立/施行:成立=法律として決まった。施行=実際に運用が始まった。
ちょこっと考察メモ
「税制大綱に書いてあった=明日から税率が変わる」ではないんですよね。
でも逆に言うと、税制大綱に載る=かなり現実味が出るのも事実。投資家としては“準備する価値”が出てきます。
【日本】2025年6月成立:資金決済法の改正で何が動いた?
※この改正は2025年6月に成立・公布済ですが、施行日は「公布から1年以内の政令で定める日」です(=運用開始日は別途決まります)。
まず、日本で「もう成立している」動きから。
2025年6月成立の資金決済法改正では、暗号資産・ステーブルコイン周りで大きく3つが注目されています。
1)“国内保有命令”が可能に(破綻時の資産流出を止める狙い)
ざっくり言うと、交換業者が何かあったときに、利用者資産が海外へ流れ出るのを抑える方向です。
たとえば…
もし取引所が破綻しかけたとき、保管している暗号資産が海外口座へ逃げてしまうと、回収が難しくなります。そこで「国内に持たせる」選択肢を制度的に用意する、というイメージです。
2)“仲介業”の創設(売買・交換の「媒介だけ」をやる業者を登録制に)
これ、地味に重要です。改正では、利用者の資産を預からず、取引所と利用者を“つなぐだけ”の仲介を行う業者を登録制にしました。説明義務や広告規制は課す一方、預からないので財務規制は置かない、という整理です。
たとえば…
「アプリで口座を作る→裏側で提携取引所につなぐ」みたいなサービスが今後増えやすい。
そのとき、無秩序に広告だけが強くなると事故が増えるので、最低限のルールを敷くイメージです。
3)信託型ステーブルコインの裏付け資産運用が一部柔軟に
信託型ステーブルコインの裏付け資産について、国際動向を踏まえ、一定割合(上限)で国債・定期預金での運用を認める方向が示されています。
ここだけ押さえるなら
日本は「野放しにする」のではなく、利用者保護(破綻・広告)とイノベーション(仲介・ステーブルコイン)を両立させる方向に舵を切っています。
【日本】2025年12月:金融審議会WG報告が示した「次の一手」
次は“まだ法律ではないけど、次の法改正の設計図”に近い話。
金融審議会の「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」報告(2025年12月10日)が、かなり踏み込んでいます。
なぜ見直し?:「投資対象化」が進んで、詐欺・市場濫用への対応が急務
報告書は、海外ではインサイダー取引も含めた詐欺・市場濫用への対応強化が勧告されていること、そして日本でも対応強化の必要性が高まっている、と整理しています。
たとえば…
「上場(取扱い開始)前に内部情報を知って買う」
「SNSで“確実に上がる”と煽ってから売り抜ける」
——こういう行為が市場の信頼を削るんですよね。信頼が削れると、結局は“長期の資金”が入ってこない。
ポイント1:暗号資産を、金商法の枠組みで“別カテゴリ”として位置付ける方向
報告書は、暗号資産は有価証券とは性質が異なるため、有価証券とは別の規制対象として金商法に位置付けることが適当、としています。
ちょこっと考察メモ
これ、投資家目線だと「ルールが株に寄る」というより、
“投資商品っぽくなった暗号資産”に合わせて、監督の道具箱を増やす感じなんですよね。
ルールが整うと、良くも悪くも“本気の資金”が入りやすくなります。
ポイント2:どこまでを規制対象にする?NFTやステーブルコインは一律にしない
報告書は、NFTは性質が多様で一律の金融法制対象は慎重に、ステーブルコイン(デジタルマネー類似型)はまた別の整理、という方向を示しています。
たとえば…
“ゲーム内アイテム的なNFT”まで全部が同じ金融規制になると、現場が回らなくなる。
一方で“投資性が強いトークン”には、それ相応の情報開示や不公正取引対策が必要——というバランスです。
ポイント3:情報提供(ディスクロージャー)を「誰が」やるのかを明確に
報告書は、交換業者が分かりやすく情報提供するのが基本だが、中央集権的管理者が資金調達をする場合は、その管理者に情報提供義務を負わせるべきという考え方を示しています。
初心者向けに超ざっくり言うと…
「誰かが発行・仕様変更をコントロールできるトークン」ほど、情報の非対称性(運営だけが知ってること)が起きやすい。
だから、白書・リスク・発行量・運営体制などを、ちゃんと出しましょうね、という流れです。
【日本】暗号資産の税金(税率)はどう変わる?「分離課税」論点を具体例で
ここが一番気になりますよね。
現状の日本では、暗号資産の利益は基本的に雑所得扱いで総合課税(累進)になりやすく、最大税率が高くなり得ます。
その一方で、令和8年度税制改正大綱ベースの整理として、特定の条件を満たす暗号資産の譲渡益を20.315%で分離課税する方向が示されています。
そもそも「申告分離課税」って何?(株と同じイメージ)
簡単に言うと、給料などの所得と“混ぜずに”、その利益だけ別計算で税率固定にする方式です。
上場株の譲渡益がだいたい20.315%(所得税+住民税+復興特別所得税相当)で計算されるのと似たノリですね。
暗号資産も同じ方向に寄せるのが「分離課税化」論点です。
提案されている「分離課税」対象は“誰でも全取引”ではない(ここ大事)
解説資料ベースでは、分離課税の対象は、ざっくり次のイメージです。
- 「分離課税暗号資産取引業(仮称)」を行う者(=制度上の登録・監督を受ける側)に対して、
- 金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等(特定暗号資産)を譲渡した場合、
- その譲渡所得等を20.315%で分離課税
つまり、こういうこと
「どのコインでも」「DEXでの売買でも」一律で分離課税、というより、
“制度の監督が効く場所(登録業者のルート)”を通る取引を、まず分離課税に寄せる設計に見えます。
損失はどうなる?:最大の改善ポイント「3年繰越控除」
同じ資料では、特定暗号資産の譲渡で生じた損失について、一定要件の下、翌年以後3年間の繰越控除を可能にする、とされています。
具体例で見ましょう。
- 2027年:特定暗号資産で▲100万円の損失
- 2028年:特定暗号資産で+60万円の利益
- 2029年:特定暗号資産で+70万円の利益
繰越ができると、2028年は利益60万円を損失で相殺→課税対象は0円。
2029年は残り損失40万円を使って、利益70万円のうち40万円を相殺→課税対象は30万円。
「負けた年が無駄にならない」って、精神的にも資金的にも大きいんですよね。
逆に注意:「総合課税のままになる取引」も残り得る
同資料では、総合課税となる暗号資産について、譲渡所得の特別控除(50万円控除)や長期保有の1/2などが適用されない、損益通算もしない、という整理が示されています。
初心者がつまずきやすい例
- DEXでの売買:相手方やルートが“制度で捕捉しづらい”ため、分離課税の対象要件から外れる可能性があります
- 個人間の直接売買:同様に、対象外になる可能性
- 海外業者での取引:制度設計次第では対象外の整理になり得ます(=だから国内制度の整備が議論される)
ちょこっと考察メモ
税制って、「公平」と「取りやすさ(捕捉)」の綱引きなんですよね。
分離課税が進むほど、“ルールの上に乗った取引”が有利になりやすい。
それが良い悪いではなく、投資家としては「自分の取引ルートがどっち側か」を意識しておくのが現実的です。
いつ適用?:金商法改正の施行とセットで動く可能性
解説資料では、分離課税の適用時期は、金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年1月1日以後に行う譲渡等、とされています。
つまり、税金の話だけ独立して走るというより、投資家保護の法整備(=金商法まわり)と“抱き合わせ”で進む設計になりそう、ということです。
【米国】暗号資産“3法案(Crypto Week)”とは?:結論、これです
米国では、2025年7月の「Crypto Week」で、下記3つの法案を扱うとHouse公式が明言しています。
- CLARITY Act(暗号資産の市場構造=誰が監督するか)
- Anti-CBDC Surveillance State Act(中央銀行デジタル通貨=CBDCを禁止する方向)
- GENIUS Act(ステーブルコインの連邦ルール)
1)GENIUS Act:ステーブルコインの“連邦ルール”が成立(2025/7/18)
GENIUS Actは、Congress.gov上で2025年7月18日に成立(Public Law)となっています。
White HouseのFact Sheetでは、主に次のような枠組みが説明されています。
- 100%の準備資産(ドルや短期国債など流動性の高い資産)
- 毎月の公表(準備資産の内訳を公開)
- 誤認表示の禁止(「政府保証」「法定通貨」などのミスリードを禁じる)
- マネロン対策(BSAの枠組みに明確に組み込む)
- 合法命令による凍結・差押え等への技術的対応を要求
投資家目線の具体例
「ステーブルコイン=なんとなくドルっぽい」から、
「裏付けと開示が義務化された“ドル建て決済インフラ”に近づく」へ。
ここが、資金が入りやすくなる(あるいは企業が参入しやすくなる)理由のひとつです。
2)CLARITY Act:暗号資産の“市場構造”を作る(SECとCFTCの役割分担)
CRS(米議会調査局)の解説では、CLARITY ActはCFTCにデジタル・コモディティ規制の中心的役割を与えつつ、一定のSEC権限も残す、と整理されています。
また、Congress.govの要約では、デジタル・コモディティを「ブロックチェーンへの依存が価値に関わるデジタル資産」と定義し、枠組みを作る法案、とされています。
投資家目線の具体例
いままで米国は「それ証券?コモディティ?…で、どっちの監督?」が曖昧で、企業も投資家も疲弊しがちでした。
そこに“地図”を作ろうとしているのが市場構造法案です。
3)Anti-CBDC Surveillance State Act:CBDC(中央銀行デジタル通貨)を禁じる方向
Anti-CBDC法案の条文では、FRBが個人に直接サービス提供したり、CBDCを直接・間接に発行することを禁じる趣旨が書かれています。
CBO(米議会予算局)も、同法案がFRB銀行による個人向けサービス提供や口座提供を禁じる点を要約しています。
投資家目線の具体例
「政府が出すデジタル通貨」が進むと、
ステーブルコインや民間決済の位置づけに影響します。
だからこそ、GENIUS Act(ステーブルコインのルール)と“セット”で語られやすいんですよね。
ちなみに3法案の進捗状況メモ(2025年12月28日現在)
-
<
- CLARITY Act:下院可決(2025/7/17)→上院委員会付託(2025/9/18〜)/未成立(2025/12/28時点)/効力発生は「成立から360日後」を基本線に、規則策定が必要な部分は「最終規則の公表後◯日」などが絡む(270日は一部の暫定登録等の条文で登場)。
- Anti-CBDC Surveillance State Act:下院可決(2025/7/17)/未成立(2025/12/28時点)/(下院可決版の本文に施行日条項が見当たらないため)成立すれば原則は即時適用になりやすい。
- GENIUS Act:成立(2025/7/18, Public Law 119-27)/施行は「成立18か月後(=2027/1/18)」または「最終規則公表120日後」の早い方(前倒しあり)
日本と米国:投資家として“どこが効く”のか
ここから先は、あなたの投資スタイルで見え方が変わります。
(1)長期ホルダー:税制(分離課税・損失繰越)の恩恵が大きい
長期で積み上げる人ほど、「税率が読みやすい」「負け年が無駄にならない」は武器になります。
(2)短期トレーダー:ルート(どこで売買するか)の影響が大きい
同じ利益でも、取引ルートが制度の対象かどうかで課税の姿が変わり得る。
“税率”だけでなく、“ルールの上に乗るコスト”も含めて考えるフェーズに入りつつあります。
(3)ステーブルコイン利用者:米国は“決済インフラ化”へ、日本は“管理・運用”の整備へ
米国はGENIUS Actで連邦ルールを作り、発行者・準備・開示の枠を明確化。
日本は資金決済法改正で、仲介や裏付け資産の扱いを整備。
投資判断のコツ
「上がる/下がる」より先に、“資金が入りやすい市場”を作る制度かどうかを見ると、ニュースが立体的に見えてきます。
初心者が今やるべきこと(焦らず、でも放置しない)
1)取引履歴を“いつでも出せる形”で保管する
税制がどう変わっても、最後に強いのは履歴です。
取引所のCSV、ウォレットの入出金、DEXのトランザクション——「後で集める」はだいたい詰みます。
2)「自分の売買ルート」が制度上どこに当てはまりそうか意識する
国内取引所中心なのか、海外取引所中心なのか、DEX中心なのか。
ルートは、税制・規制の影響を一番受けやすい部分です。
3)“制度が整うほど、詐欺は言い回しが巧妙になる”と心得る
「法案が通るからこのコイン確実」みたいなセールストーク、増えます。
制度は追い風にも逆風にもなるけど、あなたの資金を守る盾には“自分の理解”が必要なんですよね。
ちょこっと考察メモ
数字の波に飲まれず、“流れ”を感じ取ることが大切なんですよね。
ルールが整う局面は、上手く付き合うと味方になります。
FAQ(よくある質問)
Q1. 日本の暗号資産は、もう株みたいに20.315%になるんですか?
A. まだ「方針・設計」段階の要素があり、法案化→成立→施行が必要です。加えて、対象は“特定暗号資産”など条件付きで整理される可能性が示されています。
Q2. DEXの取引も分離課税になりますか?
A. 現時点の整理では、分離課税は“制度上の監督が効く取引ルート”に寄せる設計が読み取れます。最終的には法案・政省令で決まりますが、少なくともDEXが自動で同じ扱いになると決め打ちするのは危険です。
Q3. 米国の“3法案”って、価格に影響しますか?
A. 直接の価格予測は誰にもできません。ただ、ステーブルコインの連邦ルール(GENIUS)や市場構造(CLARITY)は、機関投資家や企業の参入ハードルに影響しやすい論点です。
Q4. 日本の規制は強くなる=暗号資産に悪いニュース?
A. 「強い/弱い」より、“予見可能性”が増えるかで見たほうが投資家向きです。情報提供や不公正取引対策が整うほど、長期資金は入りやすくなります(短期の過熱は抑えられやすい)。
情報ソース(一次情報・公的/準公的中心)
- 金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」報告(2025年12月10日)
- 資金決済法の改正(2025年6月成立)の概要(金融庁資料)
- 暗号資産の分離課税化(令和8年度税制改正大綱ベースの解説資料)
- House Announces Week of July 14th as “Crypto Week” (U.S. House Committee on Financial Services)
- Fact Sheet: President Donald J. Trump Signs GENIUS Act into Law (The White House, 2025/7/18)
- S.1582 – GENIUS Act (Congress.gov)
- CRS: An Overview of H.R. 3633, the CLARITY Act (2025/9/30)
- H.R.1919 – Anti-CBDC Surveillance State Act(条文)
- CBO: H.R. 1919, Anti-CBDC Surveillance State Act(要約)
【注意】本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資行動を推奨するものではありません。税務・法務は個別事情で結論が変わるため、重要な判断は税理士・弁護士等の専門家や公的情報をご確認ください。暗号資産は価格変動が大きく、元本割れのリスクがあります。


コメント