2024年から2025年にかけて、ビットコインをめぐる世界の動きは、まるで“静かな地殻変動”のようでした。
ニュースとしては一見バラバラで、「ETFが承認された」「どこかの国が規制を変えた」「大手企業が方針を転換した」──そんな断片が次々に流れてくるだけ。
でも、それらを一本の線でつなぐと、ひとつの“巨大な物語”が立ち上がってくるんです。
そしてその物語のクライマックスが訪れたのは、2025年12月──
Vanguard(バンガード)がとうとう折れた瞬間。
かつて「暗号資産は扱わない」と明言し、金融界でも最も保守的な象徴とされてきた巨人が、ついに暗号資産ETFのアクセスを解禁したのです。
ただ、この“とうとう…!”という衝撃は、ニュースだけを追っていても理解しにくい。
なぜなら、この1年半のあいだに、ほんとうに多くの「橋渡しの動き」と「態度の変化」が積み重なっていたからです。
橋が一本ずつかかり、やがて川の流れそのものが変わっていく──そんなプロセスを理解してはじめて、Vanguardの参入がどれほど大きな転換点だったかが腑に落ちる。
この記事では、ニュースをただの出来事として並べるのではなく、“歴史の流れとして読む”ために、2024〜2025年の1年半をじっくり辿っていきます。
あなたと一緒に、「世界がどのようにしてビットコインを受け入れていったのか」を見ていきたいんです。
市場は数字で動く。でも世界が変わるときは、必ず「人の態度」から変わり始めます。
その態度の変化を追うと、ニュースが“線”になり、そして“流れ”になる。
投資家に必要なのは「点を集める力」ではなく、点をつなぐ力だと私は思っています。
あなたはきっと、その流れをつかめる読者さんだと思うんです。
- 第1章|2024前半──静かに始まった“インフラ化の波”
- 第2章|2024後半〜2025前半──国家が“方向を決める”フェーズへ
- 第3章|2025後半──反対勢力が“静かに、しかし確実に”折れていく
第1章|2024前半──静かに始まった“インフラ化の波”
2024年前半のビットコインは、表面的には「価格が上がった」「ETFのニュースがあった」などの短期的な話題に目が向きがちでした。
でも、長期投資家が注目していたのは、もっと深い部分。
“ビットコインが世界の金融インフラに組み込まれはじめた”という、静かだけど圧倒的な変化です。
1-1.米スポットビットコインETF承認(2024年1月10日)
2024年1月10日、SECはついに現物ビットコインETFを承認しました。
長年否定してきた姿勢を180度転換し、BlackRock、Fidelity、Invesco など11社を一括承認。
この承認は、ただ「商品が増えた」という話ではありません。
それは金融インフラの入口──“ゲート”が開いたという意味。
ETFは世界中の機関投資家、年金基金、金融アドバイザーの標準ツールであり、
ここにビットコインが正式に置かれたことが衝撃だったのです。
ETFは「ビットコインへの正規ルート」。
これが整うと、巨額マネーは“制度の枠内で安全に流入できる”ようになります。
実際、この直後からビットコイン市場には
「価格ではなく、資金の性質が変わった」
という感覚が広がりました。
これは投機筋ではなく、超長期運用マネーが入ってきた証拠でもあります。
1-2.香港がアジア初の現物ETFを承認(2024年4月)
2024年4月、香港証券先物委員会(SFC)は、アジアで初となるビットコインとイーサリアムの現物ETFを承認。
中国本土の資金流入には制限があるものの、
「アジア金融圏がビットコインを公式に扱い始めた」
という象徴的な出来事でした。
香港は国際金融センターとしての存在感が弱っていた時期でもあり、
ここでクリプトETFを積極的に受け入れたのは、
「金融としての差別化」でもありました。
この決定が示したのは、
「ビットコインはもう金融センターが無視できるテーマではない」という世界の空気です。
1-3.ETH現物ETF承認(2024年5〜7月)──BTCの“特例時代”が終わる
2024年5月、SECはスポット・イーサリアムETFの承認に踏み切ります。
同年7月にはBlackRockを含む複数社が上場を開始。
ここで重要なのは、
「ビットコインだけが特別」ではない世界へ動き始めた
ということ。
BTC が ETF になっただけの世界と、
BTC と ETH が両方ETFとして扱われる世界では、
市場の深さも投資家層もまったく違います。
BTCに続いてETHも承認された時点で、
“暗号資産全体が金融アセットとして扱われはじめた”ことが確定します。
この時点ではまだ、大手保守派は沈黙していました。
でも、静かに、不可逆なインフラ化が始まっていたんです。
1-4.欧州ETN/ETP市場の急拡大(2024〜2025)
2024年後半〜2025年にかけて、欧州市場ではクリプトETN(上場投資証券)の出来高が爆発的に増加しました。
特にドイツのXetraでは前年比239%増という異例の伸び。
そして2025年3月、BlackRock Europe がヨーロッパ版のBTC ETPを新規上場。
ETFで成功した米国の資金フローを補完する形で、
欧州市場でも“正規ルート”が整備されていきます。
世界が変わるときは、実はこんなふうに“静かに、でも確実に”インフラが整っていくものなんですよね。
この段階ではまだ誰も「Vanguardが折れる」なんて想像していませんでした。
でも、確実に流れが変わりつつあった。
それは数字よりも、人々の態度の変化に現れています。
第2章|2024後半〜2025前半──国家が“方向を決める”フェーズへ
2024年前半は、ビットコイン市場の「静かなインフラ化」が進んだ時期でした。
しかし、世界が本格的に動き始めるのはその後──
国家がクリプトを“無視しない”姿勢を取り始めた2024後半からです。
市場がほんとうに変わるときというのは、大企業よりも先に、
政治や国家の態度が変わるものなんですよね。
そしてその影響は、後になってから巨大企業の「態度の転換」を引き起こします。
では、2024後半から2025前半までに、どんな“流れの変化”が起きていたのでしょうか。
ここが、Vanguardが折れるまでの“中盤の核心”になります。
2-1.トランプのBitcoin 2024スピーチ(2024年7月27日) ──かつての否定派が、旗を掲げた
2024年7月、ナッシュビルで開催された「Bitcoin 2024」。
アメリカで最も影響力のある政治家の一人、ドナルド・トランプ氏がステージに立ちました。
そして、こう宣言したのです。
「アメリカをビットコイン生産の世界一にする」
トランプ氏は2021年ごろまで「ビットコインは詐欺のようなものだ」と発言していた人物。
その彼が態度を180度変えた背景には、明らかに国内の民意と市場の変化がありました。
アメリカはシェール革命を経てエネルギー輸出国になり、
テキサスを中心にビットコインマイニングという“電力産業の延長”が急成長しています。
つまり、これは単なる人気取りの発言ではなく、
アメリカの産業構造を踏まえた政策的な一手だったのです。
政治家が態度を変えるときは、必ず「票」か「産業」か「国益」が動いています。
トランプ発言は、この3つが同時に動いた結果でした。
2-2.ホワイトハウス Crypto Summit(2025年1〜2月) ──“クリプト産業を育てる側”に回る
2025年に入り、アメリカ政府の動きはさらに加速します。
ホワイトハウスが公式に「Crypto Summit」を開催し、
金融機関・テック企業・規制当局が一堂に会しました。
ここで示された方向性は明確でした。
「クリプト産業はアメリカ経済の成長エンジンになりうる」
「リスクをコントロールしながら、育成する必要がある」
つまり、アメリカは
“排除する立場”から“育成する立場”へ
完全に態度を変えたのです。
このサミットは、マーケットに大きな影響を与えたわけではありませんが、
「国家の空気感」が変わったことは確かでした。
そしてこの変化は、後の巨大機関の態度転換につながっていきます。
市場は数字より先に、人の態度で動く──まさにその典型例でした。
2-3.ビットコイン国家準備金(Strategic Bitcoin Reserve)構想(2025前半) ──国家が“資産としてのBTC”をテーブルに乗せた
2025年春、アメリカ議会の一部で議論され始めたのが、
「Strategic Bitcoin Reserve」──国家ビットコイン準備金構想です。
金(ゴールド)や原油などと同じように、
国家が戦略資産としてビットコインを保有するべきかどうかを検討するもの。
この議論のポイントは、実際に保有する/しないではありません。
重要なのは、
「ビットコインを国家資産として扱う可能性が正式に議題に乗った」
という事実そのもの。
これが意味するのは、
ビットコインが国家の枠組みの外にある“反逆の資産”ではなく、
国家が利用する可能性のある“戦略資産”として認識され始めた
ということです。
「国家がビットコインを否定しない」という段階から、
「国家がビットコインを利用しうる」段階へ──
ゲームのルールが完全に変わり始めた瞬間です。
2-4.世界各国の規制が“締め付け”から“整備”へ(2024〜2025)
アメリカだけではありません。
2024〜2025年にかけて、世界の主要国も態度を変え始めます。
● 日本:ファンドの暗号資産保有を容認へ(2024年2月)
金融庁のルール見直しにより、
ベンチャーファンドなどが暗号資産を保有できるようになりました。
これは「国内でのWeb3産業育成」を進めるための土台となります。
● 英国:クリプトETNを段階的に解禁(2024〜25)
2024年にはプロ投資家向けのETNを容認。
そして2025年には一部の一般投資家にも開放する方向で再調整が進みます。
● EU:MiCAの施行(2024)
EUは2024年にMiCA(暗号資産規制法)を全面施行し、
クリプト事業者は明確なルールのもとで運営できるように。
これにより、欧州では機関投資家の参入がさらに進むことになります。
世界中の国々が、ビットコインを“禁止する方向”ではなく、
“利用できるよう整える方向”へ舵を切ったこと。
これこそ、Vanguardが折れる前に起きていた最大の流れのひとつなんです。
2-5.国家フェーズの総まとめ ──「無視できる存在」から「利用を検討する存在」へ
ここまでの出来事をまとめると、
2024後半〜2025前半にかけて、世界はこう移り変わっています。
- 政治家がビットコインを“票につながるテーマ”と認識
- ホワイトハウスがクリプト産業の育成を正式に議題に
- 国家準備金としての可能性が議論される
- 各国の規制が“禁止”から“整備”へ
この流れが示しているのは、ただひとつ。
ビットコインはもう、国家が無視して良い存在ではなくなった。
そして──
この「国家の空気感の変化」は、後の巨大企業の態度変化に直結します。
人も組織も、国家の方針には逆らえないからです。
第3章|2025後半──反対勢力が“静かに、しかし確実に”折れていく
2024〜2025前半にかけて、ビットコインをめぐる世界は、
「インフラ化 → 国家が方向を決める」という大きな2段階の変化を経験しました。
そして2025年後半──市場はついに“第三段階”へ突入します。
それが、
「反対勢力が、やむを得ず折れていく」
というフェーズです。
これは派手なニュースではありません。
地震でいえば「前震」のように見えるような出来事。
でも、これが積み重なることで、最後の大きな壁──Vanguard──が崩れる準備が整っていくのです。
巨大組織の変化は、一夜にして起きるものではない。
“外堀”が埋まり、選択肢がなくなることで、静かに態度が変わっていくんです。
では、この「外堀が埋まるプロセス」を見ていきましょう。
3-1.Bank of America が態度を変えた理由(2025年12月4日)
まず最初の大きな前兆が起きたのは、2025年12月4日。
Bank of America(バンク・オブ・アメリカ;BoA)が、投資アドバイザーに対し、
ビットコイン・暗号資産関連ETP(上場投資商品)の“推奨を許可”したと報じられました。
ここで重要なのは、「推奨を許可」したという点です。
従来のBoAは、クリプトについてこう説明してきました。
- 「クリプトはボラティリティが高く、長期投資には向かない」
- 「顧客が希望するなら自己責任で購入してください」
- 「銀行として積極的な推奨はしない」
しかし2025年12月──
この姿勢が大きく変わります。
アドバイザーが、クリプト関連商品の提案を正式に“推奨してよい”ことになった。
● これは何を意味するのか?
銀行が推奨できるということは、
- 内部リスク評価で「許容できる資産」と判断された
- 規制が整い、訴訟リスクが減った
- 顧客の需要が無視できないほど増えていた
つまり、BoAの内部文化が変化しているということです。
企業は本音では「クリプトが好き」だから扱うわけではありません。
扱わない方がリスクになると判断したとき、初めて動き始めるんです。
3-2.欧州の巨大インフラも動き出す ──Kraken × Deutsche Börse
Bank of America のニュースから数日後、
今度はヨーロッパでも象徴的な出来事が起こります。
Kraken(世界最大級の暗号資産取引所)と、
ドイツ取引所グループ(Deutsche Börse)が提携し、
クリプトとトークン化証券(セキュリティトークン)を統合するインフラを構築することを発表したのです。
Deutsche Börse は、ドイツの株式市場Xetraを運営する超巨大インフラ企業。
伝統金融の“心臓部”ともいえる存在です。
● この提携の意味
これは単なる企業間のコラボではありません。
「伝統金融(TradFi)」と「クリプト(Web3)」の融合を象徴する一歩でした。
ビットコインの世界では、ずっと「伝統金融 vs クリプト」の構図が続いていました。
しかし2025年後半になると、この“境界線”自体が溶け始めます。
金融のインフラ側が、クリプトの仕組みを前提にサービスを設計する──
そんな時代に入ったのです。
伝統金融のインフラ企業がクリプトを受け入れることは、
「この市場は消えない」と認定したに等しい動きです。
3-3.なぜ“反対勢力”が崩れ始めたのか?
ではなぜ、このタイミング(2025後半)で反対勢力が折れ始めたのでしょうか?
理由は3つあります。
① 国家レベルでの「育成方針」が明確になったから
アメリカ政府の方向転換、国家準備金議論、規制整備などにより、
「クリプトは排除の対象ではない」という空気が完全に定着しました。
国家の方向性が定まると、企業は逆らえません。
② インフラが整ったことで“取り扱いリスク”が減ったから
ETF、ETN、カストディ、監査、税務──
すべての制度が急速に整備され、BoAクラスでも扱いやすくなりました。
③ 投資家側の需要が爆発していたから
アメリカの若年層〜中堅層のポートフォリオにおいて、
ビットコインが「必須」に近い立ち位置になりつつありました。
顧客が求めるものを永遠に拒否するのは、ビジネスとして難しいのです。
反対勢力は突然折れるのではなく、“折れざるを得ない状況に追い込まれていく”んです。
そしてその最終地点が、Vanguard でした。
3-4.市場心理:静かな波の裏で“空気”が変わっていた
このころ、ビットコインの価格は短期的な上下を繰り返していました。
でも、長期投資家のあいだでは、もっと大きなテーマが語られていました。
「これはもう、止まらない流れなんじゃないか?」
「否定していた人たちが、ひとりひとり静かに折れていってるよね」
このような“空気感の変化”は、チャートには表れません。
でも、歴史的に見て最も重要なのは、この「空気」なんです。
そして、すべての“前兆”が揃ったとき──
最後の巨人、Vanguard が動く準備が整いました。
3-5.クライマックスへ向かう前夜 ──外堀が完全に埋まった
2025年12月上旬に入るころ、市場関係者の多くはこう言い始めていました。
「次に折れるのはVanguardじゃないか?」
「これだけ状況が整えば、参入しない理由がなくなるよね」
しかし、誰も確信は持てませんでした。
なぜならVanguardは
「暗号資産は扱わない」
「ビットコインETFは我々の投資哲学に反する」
と明言していたからです。
「最も保守的な金融機関」
「長期投資の聖地」
「資本主義の“原則主義者”」
それがVanguardのイメージでした。
でも、外堀は完全に埋まった。
国家、インフラ、投資家、競合企業──
すべてが「ビットコインを無視しない世界」に移行したのです。
そしてついに、歴史が動く瞬間が訪れます。
長くなってしまったので、前半と後半に分けますね。
次の投稿をお楽しみに!

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